保育園の質と利便性の両方を求めるという事
保育と事務、制作物の準備作業などの両立は困難である
保育園の行事や制作物は本来、子どもたちの為にあるものだと私は考えているのですが
保育施設によっては親の為のもの、保育園のイメージアップの為になっている場合も多々あるようです。
保育園の保育室に入ると壁に動物やお花、車や飛行機などの可愛らしい絵が貼ってあるのは、子どもたちが楽しい雰囲気の中で過ごせるようにとの配慮からです。
制作物に関しては月齢、年齢によって成長過程が違いますので、個人差はありますが子どもにできる事はある程度決まってきます。
保育士があらかじめ見本を作っておいて、材料を渡して子どもに製作をさせる際に
2歳くらいの子どもなら、お絵かき、シール貼り、紙を丸めたり、ごく簡単な折り紙をする事ができます。
3歳くらいの子どもなら、色画用紙で動物や花の形などで作った台紙や折り紙、クレヨンとのりを渡せば、ちょっとした芸術作品ができます。
4歳以上のこどもなら、画用紙と色紙とクレヨンやペン、廃材とのりとハサミを渡せば、なかなかの芸術作品ができます。
年齢が4歳以上になれば、ある程度は自分の事は自分でできるので、子どもが落ち着いていれば、保育士は子どもの様子を見守りながらその合間に少しずつ事務作業や制作物の準備ができます。
ただ4歳児以上だとこどもの人数が多いので、その制作物の土台となるモノを作るのに、結構な時間を要します。
2、3歳くらいだと微妙なところはありますが、基本的に補助を含め少なくとも2人以上の大人が面倒を見るので、多少は交代でその事務作業や制作物の準備ができることもあります。
ただ、その日の子どもの体調や気分、出席人数でもできるかできないかは変わるので一概には言えませんが、できないことの方が多いです。
0~2歳未満児位の小さい子だと、ペンやクレヨンでのなぐり書きや、保育士が子どもの手に絵の具を塗ってそれを画用紙にペッタンするなど、子どもが自分でできる事は本当に限られています。
それで保育士が画用紙や廃材を使って動物やお花の形の絵やモノを作っておき、それにちょっとだけ子どもが手を加えるという形がほとんどになるかと思います。
子どもができる事がほんの少しなので、95%保育士が作り、残りの5%の部分を子どもが手を加えることで完成させるという事になります。
ですので、子どもが小さければ小さい程、その分作る制作物にかける手間と時間が多くなります。
さらに、小さい子は自分でご飯を食べたり、お着替えをしたり、片づけをしたりするという事もままならないので、その分保育士の介助が必要になります。
そうなると子どもへの関わりがほとんどになるので、連絡帳を書いたり、日誌を書いたり、制作物を作るのは子どもたちがお昼寝をしている時間か、お迎えが来て帰った後にするしかありません。
お昼寝の時間に子どもたちが全員寝ていたら、その間に制作物や日誌、連絡帳を書く時間に充てられるのですが
小さい子はなかなか寝てくれない場合が多く、最低でも1人の保育士が寝かしつける必要があるのですが、その分手を取られます。
それを他の保育士がカバーするのですが、なかなか寝付けない子どもが複数いたり、体調を崩してぐずっている子どもがいると、場合によっては制作物や日誌、連絡帳などの事務、雑用がほとんどできなくなってしまいます。
それだけならまだいいのですが、下手するとお昼の休憩すらろくにとれない状況になる事も普通に出てきます。
お昼寝の後のおやつの時間には、その準備と子どもへの介助、片づけをこなし、保護者がお迎えに来るまで保育だけに集中します。
保育中は子どもから目が離せないので、制作物や日誌、連絡帳などの事務、雑用はほとんど残業するか持ち帰ってする事になります。
急ぎでなければ翌日に回す事もできますが、保育士の人数が定員ギリギリ或いは1人でも足りなかったりすると、残業か持ち帰るかでもしないと業務に支障をきたすので、なかなかそうはいきません。
保育園側は経費の大半を占める人件費をできるだけ抑えて利益を出そうとする為に、定時が過ぎようものなら、保育士に時間が来たら早く帰るように促します。
保育士が仕事が残っている事を園長や上の人間に言おうが言うまいがに関わらず、保育園側は残業をすることを認めないことがほとんどです。
仕事が残っている事を把握していても、利益を出す為に敢えて残業を認めないのです。
そうなると、残業ではなく勝手に保育士が自らの意志で残っているという事にされて、残業手当などは余程の事でもない限りはつかなくなります。
酷い場合には保育園側が園に残って作業する事すら一切認めようとせず、早く帰るように促します。
それで仕方なく、保育士は仕事を持ち帰って自宅でするしかなくなります。
手の込んだ制作物であればある程、時間がかかります。
制作物はクラスの園児の数だけ揃える必要がありますので、手の込んだものを数多く作るとなると、それだけ時間がかかり、自分の時間を犠牲にするしかなくなります。
それがたまにだったら、そんなに苦痛ではないかもしれません。
でも、行事が多くそれなりに手の込んだ制作物を作るのが当たり前になっている保育園の場合だと、勤務時間内で事務や作業ができない状況が続くと、その分仕事はどんどん溜まる一方です。
そうなると、仕事がいつまでも終わらないという、保育士にとっては地獄のような状況が延々と続きます。
保育士の給与は手取りだと、20万円にも満たない園も未だにザラにあります。
仮に二十数万円貰えるにしても、その分の残業がほとんどつかず仕事の持ち帰りを続けている状況だと、最低賃金を余裕で割っていたりします。
でも、やらないと保育園や保護者から何を言われるかわかりませんし、怠けている、仕事が出来ない人間というレッテルを貼られてしまうので、やらざるを得ません。
それを避ける為には延々と無理を続ける以外に選択肢はなく、限界が来るまで休みなしの奴隷のような労働環境が蔓延します。
その状態が続くと余裕がなくなるので、まともな保育は物理的にできなくなります。
それで時間の経過とともに、大半の保育士がストレス過剰で精神を病んだり身体を壊して退職に至る事になるのです。
融通の利く認証保育園を選択するという事
企業主導型の保育事業をしている会社の保育園は多少お金を多めに払えば、公立や社会福祉法人の保育園よりも
延長保育の時間に融通が利く
夜間保育に対応してくれる
夕ご飯を準備してくれる
オムツやタオルを全部準備してくれる
英語や中国語などの語学のカリキュラムがある
有名私立幼稚園や小学校のお受験対策がある
至れり尽くせりですね。
それらの利便性があるのでこの保育園を選ぶという選択肢も全否定はしません。
仕事や家庭環境によっては必要な場合もあると思います。
ただ、それらの利便性を求めると保育の質は確実に下がります。
例えば
保育園の行事の前には、普段の仕事に加えてその準備作業や行事の為の子どもたちへの指導など、仕事量が倍くらいに増えます。
一昔前はそれなりに保育士の人数が揃っていました。
保護者からの要望も今ほどは過剰ではありませんでした。
だからこそ、多少の残業をすることで何とか乗り切れていたのかもしれません。
でも、今は人手不足なので同じ水準でやるのは非常に困難です。
さらに上記の利便性を求めると保育に必ず支障をきたします。
その理由は
企業主導型の認証保育園だと、できるだけ多くの利益を確保する為に
多くの経費となる人件費を削減する目的で、大半を人件費の低い新卒採用を中心にします。
さらに、制度上可能になったので、大半の認証保育園では保育士の数を、認可保育園の基準の半分くらいまで減らしています。
減らした分は安くで雇える無資格の補助スタッフを雇うことで補い、数を揃えています。
確かに数は揃っていますが、無資格の補助スタッフだと制限があり、出来る仕事の範囲が限られてしまうので、その分のしわ寄せが有資格の保育士に来ます。
若い人だと体力はありますが社会経験が浅い事がほとんどです。
ある程度研修を受けたとしても、不測の事態に対応できない事も当然出てきます。
精神的負担は決して小さくないと思います。
その上さらに、あれもこれもと保護者から利便性を求められると対応しきれず、より余裕がなくなり必然的に子どもの安全管理にフォーカスせざるを得なくなり、保育の質が下がります。
過剰な仕事負担が続くと、追い詰められた保育士は仕事を辞めます。
人手不足になり労働環境はより劣悪になります。
さらに保育の質が下がります。
こんな感じで延々と負のループに嵌ったまま抜け出せなくなります。
表面的には公立や社会福祉法人の保育園よりもちょっとだけ給料の額が増えたとしても
実質的には過剰な労働負担を強いられているので、まともな保育は物理的に不可能なのです。
表面上の人数が揃えば良いというものではありません。
保育士はロボットではなく、生身の人間です。できる事とできない事があります。
新卒中心の若い人が大半を占めていると尚更です。
仮にベテラン保育士がいたとしても、利便性と保育の質を両方求めるのは物理的に不可能です。
どちらか一つを選ぶしかありません。
それか集団保育をする保育園を選ばず、相応の報酬を支払って個別にベビーシッターを雇うしかないでしょう。
公立、認可、無認可、認証どの保育園も本質は同じ
保育園を選ぶ目安ですが
下記の3つは保育園のホームページを見ればある程度はわかります。
行事が多い
手の込んだ制作物を提供している
利便性が高く融通が利く
これらの条件があるにも関わらず
新卒を中心に採用している
見学に行ったらほとんどが若い保育士ばかりである
常に求人を出している
という状況ならば
保育士の労働環境は劣悪なので、質の高い保育を求めるのは不可能です。
社会福祉法人の保育園だと企業主導型の認可保育園、認証保育園よりは多少はマシな場合が多いですが
社会福祉法人の保育園でも経営者が高い報酬をとり、保育士は安い給料でこき使われているところも普通にありますので、社会福祉法人であるという事だけでは安心材料にはなりません。
公立の保育園でも東京、大阪を見る限りでは常に求人を出してます。
自治体によっては、あまりにも人が来ないので派遣を利用しています。
自治体によって環境は全然違いますので一概には言えませんが
公立の保育園は社会福祉法人、企業主導型の保育園よりはナンボかマシ程度の園もあれば、良くない園もあります。
公立、認可、認可外、認証のどちらの保育園にしても
行事が多い
手の込んだ制作物を提供している
保育士の顔色が悪い
常に求人を出している
という状況の保育園は
保護者が過剰なサービスを要求している為に、疲弊した保育士が
何とか取り繕いつつ、無理して働き続けているだけです。
集団保育を行う保育園で、自分の子どもに健全な保育を受けさせたいのなら
保育園や保育士に過剰なサービスを求めない。
自分でやれることは自分でやる。
保育園に対して多少多くのお金を払えば何とかなると思わない。
利便性があまり良くなくても、手の込んだ制作物でなくても、保育以外の部分で足りない部分があったとしても、保育に支障がなければ大目に見てあげてください。
保育士という過酷な仕事を低賃金でやってくれている時点で、非常に貴重で有り難い存在ではないかと私は思います。
そもそもやってくれる人がいなければ、保育園の運営自体が成り立ちませんから。
その貴重な存在ともいえる保育士たちを大事にしてあげてください。
待機児童問題の早期解決を望むのなら、それにつきるかと思います。
あと、下記のブログを参考程度にどうぞ。
RAPT×読者対談〈第128弾〉完全解決! もう子育てに悩まない。